ミックス・マスター・マイク:膨大なレコードコレクションからインスピレーションを受けるビースティ・ボーイズのターンテーブリスト

ミックス・マスター・マイクは、1998年の『ハロー・ナスティ』以来、ビースティ・ボーイズの専属DJであり、ターンテーブリストとして活動しています。音楽のパイオニアであるマイクは、最近ではサイプレス・ヒルのDJをしたり、バーチャルリアリティーを取り入れた自身のソロアルバムを制作したりと、さまざまなプロジェクトで活躍中。また、『ビースティ・ボーイズ・ブック』を記念した「ライブ&ダイレクト」ツアーでもライブDJを務めました。そんなミックス・マスター・マイクに、普段聴いている音楽から、8万枚ものレコードコレクションの中で最も貴重な作品、『ダーティハリー』にインスピレーションを受けた理由まで、パリでインタビューを行いました。

『ビースティ・ボーイズ・ブック』の表紙

−「Beastie Boys Book: Live & Direct」ツアーでライブDJをされていますが、感動的な経験でしょうね。ツアーはどのような雰囲気ですか?
音楽史上最高のヒップホップグループの一つであるバンドのライフストーリーに関わることだからね、素晴らしい体験だよ。アダム・ヤウクがいないから何か欠けている感じがするけど、彼もこのツアーの成功を望んでいると思う。ツアーは楽しいよ。特にアダム・ホロヴィッツとマイク・ダイヤモンドと一緒だとね。彼らと一緒に控室で準備をしていると、たくさんの思い出がよみがえってくるんだ。家族みたいなものだね。

−『ビースティ・ボーイズ・ブック』の中で、アダム・ヤウクと初めて会ったときのことを『The Draco Report』というSFストーリーとして紹介していますよね。これには何かインスピレーションがあったのですか?
彼との出会いについては何年もずっと同じ話をしてきたから、違ったアプローチを使ってみたんだ。オーディオブックでは、はじめにヴォコーダーのボイスを使ってからストーリーを読み上げている。ちょっと変わったことをしてみたかった。時代を超えて後世に残るような、人々が話題にするようなものを作り出したいといつも思っている。単に「アダムとはロックステディのアニバーサリーナイトで会って、留守電にメッセージを残した」なんて話すよりも、「ビースティ・ボーイズと出会った時のマイクのSFストーリーってかなりやばいよ」と言われた方が面白いと思ったんだ。

−長年にわたるライブパフォーマーとしての活動の中で、どのように成長してきたと思いますか?
自分はどちらかと言うとリスクテイカーだと思う。考えすぎず自然と体が動くんだ。ステージに立ったら、マイクを手にして「みんな、カメラの準備はいい?」って聞いてみる。みんながカメラの準備ができたらスタートだ。昔は自分を信じていなかったわけじゃないけど、今は自分への信頼はもっと強くなったね。

−最近は、ステージ外ではどのように音楽を聴いていますか?やはりレコードオタクなんですよね?
家にいるときは、レコードを聴いているよ。8万枚以上はあるかな。スタジオ2つ分がレコードでいっぱいになっていて、あとはお気に入りを5000枚選んで今仕事しているスタジオに置いているよ。

バンドメンバーとのツアーのため、長年たくさんのレコードを集めてきた。今でも160ギガバイトのiPod Classicを持っているから、そこにたくさんのレコードを保存しているんだ。音楽ストリーミングはほとんどしないよ。

−ちょっと待ってください。8万枚のレコードを持っていると?
そう。でも面白いことに、持っているレコードを見返してみると、まだ封を開けてないものがたくさんあるんだ。大量に買ったレコードを持って帰ってきてしまっておく。でもまたすぐツアーに出かけるから、何を持っていたか忘れてしまうんだ。コレクションを見ると宝探しみたいな感じだよ。「このディック・ハイマンのレコードはどこから出てきたんだ?」みたいな。

−もしコレクションを処分しなければならないとしたら、絶対にゆずれないお気に入りを何枚かに絞ることはできますか?
うーん。まず外せないのは、ジミ・ヘンドリックス初期のインストアルバム『The Summer of Love Sessions』だね。自分の中で一番のお気に入りだし、かなりのレア盤でもある。それから、マンガ『刑事コジャック』のレコードは、ブックレットを見ながらレコードプレーヤーでストーリーを聴くものだけど、これにかっこいいブレイクが入ってる!

あと、『スタートレック』のサウンドエフェクトのレコードも最高。いろいろなサウンドが入っていてすごい。もし無人島に残されてターンテーブルで回せるレコードが1枚しかないとしたら、たぶんこれを選ぶと思う。

他には…『ハロー・ナスティ』かな。この作品にはすごく満足している。ビースティ・ボーイズのレコードは全部いつの時代に聴いてもすごいものだと思うけど、この1枚は本当に特別でね。自分がグループに初めて参加したときのものだし、何より素晴らしいプロジェクトだったから。このレコードを制作したときのことは全部覚えているよ。

−あなたのクリエイティブにとって最も重要なインスピレーションとは?
小さい頃から映画『ダーティハリー』シリーズを見ていたから、映画のサントラもよく聴いていた。インスピレーションを受けたのは、ジョン・カーペンター、ラロ・シフリン、クインシー・ジョーンズかな。もちろん、ジョン・ボーナム、ジミ・ヘンドリックス、マイルス・デイヴィスもね。彼らの音楽を聴いて育ってきたし、彼らみたいになりたいと思っている。ヒーローみたいな存在だね。自分で使う楽器はターンテーブルだけど。

−20年前からビースティ・ボーイズとともに活動して以来、クリエイティブなアプローチはどのように進化してきましたか?
自分のクリエイティブなアプローチは確実に変化したと思う。レコードやサウンドを変化させたり、形づくったりするためのアイデアや考えがたくさんあるんだ。今の自分の発想は、20代の頃と比べてはるかに複雑なものになっている。クリエイティブなオプションがすごく増えたから、もっと楽しくなったね。今ではミキサーとサンプリングパッドにフィルタースイープが使える。今のテクノロジーはすごいよ。

−テクノロジーの進歩によって、音楽を作る方法はどう変わりましたか?
昔はライブでもスタジオセッションでも、レコードを入れた箱を持って行っていた。だから選曲はその時持っていたレコードに限られていた。今は自分自身でサウンドを作っているから、考えつくものはすべて音にすることができる。Pro Toolsを開いて、サウンドをマッシュアップしたりバウンスさせたりして作った音源をパソコンに取り込む。それをSeratoに落としてマニピュレートする。その場で即座にカスタムサウンドを生み出すことができる。

−今後の活動は?
スタジオで自分のレコードを制作しているところなんだ。まだ公開はしていないけどね。バーチャルリアリティーを取り入れた音楽を作っていて、今のところ、『Moonbase Invasion』と『Magma Chamber』というタイトルのシングルができあがっている。この2つは僕が作曲した5分間の音楽で、モーショングラフィックアーティストと協力して、正気とは思えない刺激的なビジュアルを加えたんだ。

テクノロジーの進歩とともに、いろいろなものが進化していく。そのうち2020年がやってくるけど、2020年はどんなふうになっているだろうと90年代に話していたのを覚えているよ。クルマが空を飛んでいるだろう、だとかね。実際にドローンの車が開発されているし、すごいよね。音楽にもこういった進歩を反映させるべきだと思う。

ミックス・マスター・マイクの話をもっと知りたい方は、『ビースティ・ボーイズ・ブック』の書籍またはオーディオブックをチェックするか、インスタグラムで@mixmastermikeをフォローしてください。Sonos Play:5 Beastie Boys Editionの売上はアダム・ヤウク基金を通じて、ピース・シスターズ(注1)およびリトル・キッズ・ロック(注1)に寄付されます。

Sonos Play:5 Beastie Boys Editionは、日本では、2019年3月1日よりビームス 六本木ヒルズにて限定販売いたします。

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